牧水の滝

うわー、すっごい長いこと日記書いてなかったですね。 
今、夜勤中なんですけどすっごいヒマなので何か書きます。こんな仕事片付いてるなら休みにしてくれればいいのに(笑) 

facebook方にも書いたのですが… 
先日、いつものように夜勤前に息子と娘とお風呂に入っている時、小学一年生の息子に何気なく、 
「今年はサンタさんに何をお願いするの?」 
と聞きました。娘の頭をシャンプーしながら何気なく訊いたのですが、しばらく返事がありません。 
あれ?聞こえてないかな?と思って先に湯船につかっていた息子を振り返ると、息子はその瞬間ザバッと立ち上がり、 
「サンタさんはキミだ!」 
と僕を指差してポーズを決め、(キマッタ!)みたいな顔でニコニコしていました。 

僕は内心(な、何ぃ!?き、貴様なにゆえに、あわわわ)と焦りつつも咄嗟に「ほよよ?」見たいな顔でとぼけつつ、娘の頭をシャワーで流しながら 
「え~?何それ~。違うよ~。だってサンタさんて雪が降ってるとこから来るんじゃないの~?」 
と、とりあえずの否定をして、これから次々と繰り出されるであろう息子の質問攻めに備えるために、必死にあらゆるサンタ像を頭の中に描き始めました。 

ところで、、、 

忘れもしない、僕が小学一年生の時、地元の秩父にある羊山公園という丘に遠足に行ったときのことです。 
その羊山という丘の麓に『牧水の滝』という小さな滝があるのですが、その前をクラスのみんなと歩いている時、先生が 
「これは何て言うか知ってる人~?」 
みたいな質問をしました。誰かが「牧水の滝~!」みたいに答えた後、僕も自信満々に 
「はーい!はーい!あんね、このお水ってね、馬のしょんべんなんだよ。この上に馬がいるんだよ!」 
と声高らかに申し上げました。 
なぜなら、僕は知っている。ついこの間、ここにはおかんと兄貴と来たばかりだ。 
その時に、おかんは言った。この水は、馬のおしっこであると。馬のちんちんは、とっても大きい。 
牧水の牧は、牧場の牧。この上には牧場があって、馬がおしっこをお召しになられている。 
牧水の滝。馬のしょんべん。みなさんよろしいか?見えますかな、あの立派なしょんべんが。 
みなさん、僕は、とっても物知りなのでございます。 

「違うよ? みんなー、違いまーす!これは滝ですー!牧水のー、滝ー!」 
なんと先生に全力で否定されたのです! 
「みんなー、いきますよー」 
へ?あれれ?僕の物知りっぷりを称えるコーナーはカット?もういっちゃうの? 
みんなもアハハハおしっこじゃないよー!へんなのー!いこいこー!みたいに僕をスルーしていってしまったのです。 
その後、先生に何かわかんないけど注意されて、僕は納得いかない、というよりすごく悲しい気持ちで帰路についたのでした。 

勿論、家に帰ってから僕はおかんに抗議しました。 
牧水の滝は馬のしょんべんだってウソを言ったな!?みんなに笑われた!僕はウソツキ呼ばわりだ!ふんぬー!と。 
おかんはゲラゲラ笑った後、あたしゃそんなこと言ってない、何か聞き間違えたんじゃないのか?とトボケ出しました。 
でもすごく猛抗議しても「え~?言ったかなぁ~?言ってないよ~」みたいなことを言うので、はて、そんなら僕の聞き間違いか、と僕もそれ以上抗議するのをやめました。 
ただ、しばらくしてテレビを見て機嫌を直した頃、兄貴が僕の耳元でこうつぶやいたのです。 
「おい、あれは馬のしょんべんじゃない。羊のしょんべんだ。よく考えてみろ?あそこは羊山だぞ?」 
振り返ると、兄はカッ!と視線で僕の目を貫くとしずかに目を閉じ、ゆっくりと一度、うなづいたのでした。 

ちゃんとした理由はないのですが、僕は息子の質問に対して、なるべく僕が思う答えを一度壊して僕も考えるようにしています。 
群馬の森というところに言った時、大きな馬の像を見て「この馬、どこから来たの?」と聞かれた時は「たぶん、魔法の国から来たんだと思う」と答えました。 
ただ、魔法の国から追いかけてきた魔女に魔法をかけられたから、夜しか動けなくなってしまった、と。だから、おそらく夜は超走ってる、と。 
自然史博物館というところで恐竜のロボットを見た時も「寝起きと時差ボケで動きがトロいだけではないか?」と言いました。何十年、何百年と経つにつれておそらく本来の動きを取り戻すであろう、と。 
なにせ、子供に読んで聞かせてる絵本の世界なんてとんでもなく凄いんです。意味わかんないタイミングでライオンが出てきたりはあたりまえで、で?で、どうなる?って思ってたことが終わりまで完全にスルーされてたり。きっと、息子や娘の頭の中もすごいことになってるに違いない。僕のしょっぱい想像力でボロが出て、ふーん。みたいなリアクションをされちゃうことも多々あるけど(笑)、なるべく人としての大切だと思うこと以外は子供と一緒に考えたいって思います。 

サンタに関しても、その後いろんなことを一緒に考えました。 
お風呂に水で貼る世界地図を拡げて、グリーンランドあたりから来るんじゃないか、とか、でも飛行機で一週間かかるので日本にいるのはサンタジャパンじゃないか、とか、サファリパークのトナカイは必ず出動する、とか、トナカイロボは空飛べるけど手袋してないと超寒い、とか。他にも息子は「ああ!わかった!」と言った後訳のわからないことをごにょごにょ独りでつぶやいていたので、彼の中でのサンタ像は新たにバージョンアップされてるんだろうと思います。 

3年前のクリスマスの朝は、一人窓際にたたずんでいた息子は飛行機雲に向かって「サンタさん、ありがと」と言っていました。 
2年前のクリスマスの次の夜は、夜の雲に反射して旋回するラブホテルの紫の照明を見て「あ!サンタさん、まだ配ってる!」と言っていました。 
去年のクリスマスの夜は、字の書けない妹の分も内緒で手紙を書いていました。(見つけたのがその夜だったので違うプレゼントになってしまいましたが) 

今年、ひょっとしたら、布団の中でドキドキして必死に目をつむってプルプルしてる息子は見れるかわかんないけど、いくつになっても、大人になっても、欲しい物は欲しいって堂々と素直に言いながら、願いながら生きていける人に成長していって欲しいなって、切に願う夜勤中のヒマつぶしでした。おしまい。