10年越しのホタル

天然なのか、はたまた誰か大切に守ってくれている方がいるのか。 

家から車で20分くらい、山の中の小さな河のほとりで、 

蛍見てきました。 

すごい心が静かになりました。 

無理やり心を賑やかしたくなるくらいです、なんか。 
もっさい男6人で、真っ暗な山裾の森をかきわけて見に行ったんですけど、初めは小さくてよるべない光を見つける度に「おぉ!」とか「すげぇ!」とかあがっていた歓声が、しだいに「綺麗だね」とか「あ、あそこにも・・・」とかおセンチな吐息に変わっていってました(笑)みんなもっさもさのくせして。 

小さい緑の光を見つめながら、今度、一人でボーッと眺めに来ようかなって思いました。そんで、その後、妻と子供を連れて来たいなぁ、と。 

蛍を見たのって10年振りくらいかなぁ。 

そういえば、10年前の僕は人生の転機を迎えておりました。 
大袈裟かもしれないけど、その時期を境に物の考え方や心境は一変しました。 
そんな文字通り心機一転な毎日を過ごしていた時に、思いがけず失恋はやってきたんです。4年近くつきあっていた相手にフラれたのでした。 

「あぁ、つき合ってる時に交わした言葉とか約束ってなんて儚いんだろう」 

ってその頃何度も思いました。 
好きとかそういう言葉とか、何処そこへ行こうとか、その時の感情なんて幻みたいなもんだ、そういう相手の気持ちや言葉なんて二度と支えになんてするものか、って何度も思ったし。 
なのに未練から思い出すのはそう言い合ってた頃の事ばっかりでした。 

その中に「一緒に蛍を見よう」というのがあったんです。 

僕の通ってた大学には蛍の飼育や保全をしてるサークルがあって、そのサークルは年に数日「蛍の夕べ」みたいなのを開催してました。 
その一年前にもその「夕べ」が開催されてたのですが、一緒に見る約束を僕はすっぽかしており、それは一年越しの約束となっておりました。でもその年に訪れた約束の日の頃には、彼女の気持ちは別の男性に傾きかけてました。 

「あんなに一緒に見たいって言ってたじゃないか」 

その約束をきっかけになんとか元に戻れないものかともあれこれ思案しましたたが、結局2年続けて一緒に蛍を見る事はできませんでした。 

とまあ思い返したら、10年前振りだと思ってたけどあの時はさんざん騒いだだけで、実際に見るのは小学生の時に静岡のおじちゃん家で見た以来、実に20数年振りだったのでした(笑) 

なんて言ったらしっくりくるだろ?って、さっきの光景をずっと思い返してたんですけど、ふと【幽玄】って言うのが浮かんだので調べてみました。 

ゆうげん【幽玄】(名・形動)[文]ナリ 

(1)奥深い味わいのあること。深い余情のあること。また、そのさま。 

(2)奥深くはかり知ることのできない・こと(さま)。 

(3)優雅なこと。上品でやさしいこと。また、そのさま。 

(4)中世文学・中世芸能における美的理念の一。余情を伴う感動。 

あぁ、これですね。日本語ってすごいなぁ。ホントこんな感じでした。 

でも、一人で見るのってよく考えたらあんな暗い中に幽玄すぎちゃって怖い気もするので、やっぱ今度は嫁と子供連れて行こうって思いました。 

そしたら10年越しに約束が果たされます。 

(引用) 
ホタルは水の美しい所にしか暮らしません。 
私は水の美しい所とは、そこにすむ人の心も美しい所だと思います。 
自然と人間の両方の豊かさと清らかさがとけ合った所に、ホタルは飛ぶのかもしれません 

もしかしたら、 
あの頃の想いも小さい緑の光になって飛んでいるのかしら。キャッ 

今夜は昔読んだ「蛍川」って小説を読んで寝まーす。 

つか、明日ライブです!ヒマな人は見にきてね!


体臭で言えばもう夏

ふぃ~。何とか仕事が徐々に片付いてきたー 

てか、ここんとこ、病気みたいに仕事中youtubeで80年代後半~90年代前半のバンドとかのライブ映像ばっか見てます。 
BOØWY、バービーボーイズ、ジュンスカ、ユニコーン、パーソンズ、レベッカ、プリプリ、コンプレックス等に始まって、ジッタリンジンとかブランキーとかビギンとかのイカ天で好きになったバンドとか、チェッカーズとかWinkとかまで(笑) 
んもぅ、涙が出るほどカッコイイです。なんだこれ。 

てか、もう20年も経ってるのかー、ってビックリ。 

あ、なんかこーゆーの書き始めるとまた長くなっちゃうからやめとこw 

今日はコシナイトで弾き語りやってきま~す♪ 

5/30(金) 八王子papaBeat 
『コシナイトvo.15』 
5/30(金) 
open 18:30 
start 19:00 
\1500(1drink付) 

■出演■ 
中村ケーシ(OA) 
とっしーず(Matchvox) 
のりぞー(Dugout) 
ゆうき&とし(Fee) 
縁側 
■チケット:\1500(1ドリンク付き) 

新曲弾き語ってきます!てか、大丈夫かな?あんま準備してないけど(笑) 

ところで、今日徹夜だったんですけど、今、体がちょっと酸っぱいです(笑) 
今年最初の夏を感じたのが体臭かぁ~


おじさんの恋

突然、胸というか、喉の奥の方が締め付けられたみたいになりました。 

いい映画を見た後のような鮮やかな景色のなかで、その人は、張り巡らされた無数の糸をほどくような微笑みを浮かべて、手に持った数冊の本を棚に戻していました。 

「大まかな概要を調べて資料を作っておいてください。まぁネットで検索すればすぐヒットするでしょうから。簡単でしょ?これくらいはできますよね?」 

先日の人事で配属になった社長の甥に命じられたのですが、この件に関して、丁度大学時代に同じような事例があった事を思い出し、当時の新聞を閲覧しようと図書館に来ました。 
昼前の館内は適度に涼しく、娘と同年代とおぼしき若者が数人ほど窓際のテーブルに見えるだけでとても静かでした。ホールの絨毯と古本が混じったみたいな独特のにおいを何か懐かしく感じながら、ぼんやり何を探すでもなく、ゆっくり本棚の間を歩いていました。 
題名も著者も聴いた事のない幾万もの本が整然と並んでいることに、ただ漠然と感嘆しているなかで、唐突にその人は僕の視界に飛び込んできたのでした。 

テーブルについて目的の新聞に目を通しながらも、カウンターに座って何か書きながら本を重ねていくその人を盗み見ていました。春から大学生になった娘よりも少し年長くらいでしょうか、派手ではないけどどこかに気品を備えた顔立ちのその人を。 

その日、1冊だけ本を借りました。 

「へぇ~。まぁ、こんなのネットで調べればすぐだったでしょ?わざわざ当時の新聞なんか調べなくても。まぁいいや、こういう感じで資料まとめといてください。こういうのだけは得意そうなんで。」 

いつもの事ですが、今まではいちいち嫌味なこの若造に腹を立てておりましたが、今日はなぜかあまり腹が立ちませんでした。 
デスクに戻り、案件に関する概要を再度ネットで調べ、次の資料の作成に取りかかりました。一息つこうと喫煙所に行き、スーツの内ポケットに入れた貸出しカードを手に取ってぼんやりと眺めました。 

今日もまた、初めてその人を見た日と同じテーブルに新聞を広げて時折その人を盗み見ながら思いました。 
長くて少しくせのある髪を片側の肩にまとめ、時折空の向こうを眺めては意志の強そうな口許を結ぶ仕草をみせるその人に、やはり恋心としか言いようのない想いを抱きながら、 
自分はその人に対して何をしたいのだろうか、と。 
この歳になって恋などといっては笑われてしまうかもしれないけど、確かに自分は恋をしたんだなと思いました。この図書館に来てからたった2回、1冊ずつ本を借りただけで、会話と言う会話を交わすことだってできないのに。 

ただ、わかっているのは、自分はその人に何かしたいとかそういうのではない、ということでした。 ただ、その人を遠くから眺めているだけでドキドキする。ただ、その人のことを眺めていたい。 やっぱり本当に、ただ、それだけなのでした。 

今日も1冊だけ本を借り、貸出しカードをスーツの胸ポケットに入れました。 

その夜、その人と自転車を2人乗りしてゆるい坂道を滑り降りる夢を見ました。 
2人共、若い頃に戻っていました。 

「ねぇ、これ何の本? ・・・ドストエフスキー?なにこれ恋愛もの?」 
「あぁ、悪ぃ、仕事で。今日返さなくちゃだ。かして。」 

今、玄関で靴を履きながら、そういえばこんな事が前にもあったな、と思っていました。ずいぶん昔…、中学生の頃だったか、と、大学生の時でした。 

きっと今日も逢える そして、 
今日はどんな自分になれるだろうか、 
とワクワクしてした時が。 

「今夜アタシ友達と逢う約束あるから夕ご飯どっかですませてきて。」 
「あ、そう。わかった。あ、日曜は出掛けるからな。」 
「わかってるわよ。いってらっしゃい。」 

「あ、資料見ましたよ。まぁまぁかなぁ。まぁ、あんだけ時間かけてコレかよ、ってのはありますけどね。細かくて丁寧かもしんないけど、もっとサクッとやってもらわないと。オレが上司だから許されてるようなもんすよ。」 

「はい、わかりました。気をつけます。」 

その人が近くにいるような気がしました。 
いつもなら心の中でこの若造に対して不満を叫ぶのですが、なんだか今日は自分を誇らしく思えました。それどころか、なぜか目の前の若造を愛おしく思いました。そして、目一杯思いやれるような気さえしました。 

胸に手を当てるとその人が笑ってくれました。 

僕は、 
その人のおかげで自分をちゃんと見れるようになりました。 
その人が誇りに思ってくれるように快活でありたいと思います。 
そしてその人が快活であるようにって祈っています。 
いつでも背広の胸ポケットの中ではその亡き妻が笑っているんです。 

ある日から、僕はスーツの胸ポケットに妻の写真を入れるようになりました。 
大学の図書館で初めて出逢った、いつまでも若い妻の写真です。 

今度の日曜日は、娘と二人で妻の墓参りに行きます。