奪還の29

外に出た僕は、空を仰いで小さくガッツポーズしていました。 

知らなかったよ。 

空がこんなに青いとは。 

そして同時に、まだまだ頑張ろう、と思いました。 

これでいい、と思った瞬間に歩みは止まってしまう気がするから。 

2010年になってはや7ヶ月が過ぎようとしています。 
何度も失敗を繰り返してきました。 
「その瞬間」を願うように除き見ようとした事もありました。 
「その瞬間」に対して『押せよ?』と傲慢な態度で臨んだ事もありました。 
「その瞬間」相手に媚びへつらってしまう自分を見つけた事もありました。 
ですが、堂々と、毅然と、爽やかに相対す事ができないのを相手のせいにばかりしていては、やはりどんな態度で臨もうと結果は同じでした。 

そんな自分に気がつき、ここ数ヶ月は「見ない」ことにしていました。 
「いつか」、背伸びせず、繕わず、ありのままの自分で相対す事ができたならば、その時、はじめて自然にそれを「見つける」ことができるのだろうと。 

そして、その「いつか」は、昨日、あまりにも不意にやってきたのでした。 

そう、何の気無しに、僕はコンビニのレジに立っていたのです。 
正直、忘れていました。ここ最近は気にもしていなかった。 
レモンウォーターとタバコを出してただ財布を広げていたのです。 

あ、1円がいっぱいだ、募金しよ 

ピッピッと商品をスキャンする店員のお兄さん。 

チャリンと募金箱に重なる一円玉の隊列 

「498円になりまーす」 

5百円玉を1つ、将棋を指すように台に載せる。 

あ、まだ1円玉あった、これも入れちゃえ 

「500円おずかりしまーす」 

その時でした。 

まだ財布に残っていた最後の1円玉を募金箱の中に落ちていくのを眺め、少し顔を上げたとき、僕はたまたまその店員さんの押すレジのボタンを見てしまったのです。 

『29』 

!!! 

!!!!!!!!!!!!!! 

キタ━━━━ヽ(゚Д゚ )ノ━━━━!! 

うそ?今、押したよね? 

キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!! 

今、絶対押したよね?『29』押したよね? 
あ、ごめん!『29』をお押しあそばされたよね? 

キタ━━━d(゚∀゚)b━━━!! 

そうなんです!! 

苦節3年!いや、3年以上か? 

小生、とうとうセブンイレブンのレジで『29』の奪還に成功しました!! 
「その瞬間」はあまりにも唐突に訪れたのでした!! 

ここで少し補足しますと、前にも書いたけど(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=609783852&owner_id=1895224)『29』とはセブンイレブンのレジにあるボタンのことです。 
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※3年前の日記より一部抜粋↓ 
僕もセブンイレブンでバイトしてたから知っている・・・ 
レジで最後に押す10コのボタンが意味するものを・・・ 
水色とピンクそれぞれ『12』『19』『29』『49』『50』と1ボタンがあって 
彼女が押した、水色の『49』は・・・ 

「消費者 = ~49歳(おっさん)」 

を意味する事を!!! 
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そう、もう3年以上押され続けてたのです。『49』を。 
いや、別に33歳だから合ってるんですけど、たまには押されてみたいじゃないか! 
『29』を目標に頑張ったっていいじゃないか! 

僕はある時期から『29』がたまらなく欲しくなりました。 
どんなことをしたら『29』が手に入るだろうと、毎日、そればかり考えていました。 
そして、『29』を得るための具体的な作戦として、今年のお正月に僕はある決心をしたのでした。 

オレ、今年こそ10キロダイエットする! 

そうです。痩せてみようと思ったのです。 
産まれたばかりの可愛い娘を抱きながら、72kgだった僕は固い決意をしたのでした。 
~思えば、去年は8キロ減らして8キロ戻った。その戻り方は見事ですらあった。シャケか。ならば今年は1ヶ月に1キロ減らしてくれようではないか!~と。 
娘よ。15年後、思春期を迎え、私を不潔なものでも扱うように邪見にするつもりであろう七南よ。はたしてそううまくいきますかな?パパことこのノリカズはそう簡単に腹は出しませぬぞ? 

7/28現在、64kg。7ヶ月経過。8kg落として貯金1kg 

ただ、真の目的はそこではない。 
娘が年頃になっても一緒に街を歩いてくれるように、とかそんな柔な目的ではない。夏に息子と海に行って水着ギャルをスケベな目で眺めながら、息子をダシに若い女の子とお話をしよう、あわよくば、なんて幻想(ファンタジー)のためでもない。メタボ対策とかそんなものでは到底無い。 

全ては『29』のため。 

29は、オレの夢だ! 

(29は、オレの夢だ!) 

((・・・オレの夢だ!)) 

(((・・・・・・夢だ!))) 

((((・・・・・・・だ!)))) 

そんな矢先の昨日の『29』だったわけです。 
コンビニを出て、足取りも軽く車に乗り込み、昨日は朝から1日、上機嫌で仕事することができました。今年はあと5ヶ月。ダイエット目標はあと4kg。よぉーし!油断する事無くこの目標を継続しよう。 
意気込みも新たに帰宅途中に寄ったセブンイレブンで、あっさりまた『49』をくらいました。まぁ押し間違える事もあるしね♪店員さんだって人間だもの。あるある。いいよいいよ~♪ ただキサマ、次ハ無イカラナ 

めでたしめでたし。


三角の月

今、ベランダのとこのカーテンを開けて、息子と布団の中から月を眺めています。 

「まんまるだねぇ。」 
と言ったら、 
「今度は三角になって、次は四角になるんだよね」 
と教えてくれました。 

「雲に隠れちゃったね」 
と言ったら、 
「恥ずかしいんだね」 
と言ったので、 
「七音が見てるから照れてるのかな?」 
って言ったら、 
「うさぎちゃんがお餅をついてるからだよ。見えるでしょ?」 
と教えてくれました。 

「顔があるよ」 
と言うので 
「ガラスにパパの顔が写ってたの?」 
と聞くと 
「違うよ、月のお顔だよ」 
と言うので、またぼんやり、うすい雲に隠れた月を眺めたら、本当に雲の形が顔に見えました。 
「ほんとだ、顔だね」 
と言うと 
「笑ってるんだよね」 
と教えてくれました。 

これを携帯で打ちながら、 
「あ、また月が出たよ」 
と言ったら、既に寝てました。 

今、声を出して笑ったので、起きてんのかい!って思ってふと見たら、笑いながら寝てました。 

三角の月と遊んでるんでしょうか。


夏の日の夢

僕は二十歳くらいでした。 

母親方の従兄弟の慎一が同い年なのもあって、小学生の頃から夏休みや冬休みになると僕は青梅にある従兄弟の家に遊びに行き、数日間泊まって帰るのが慣例になっていました。大学受験の歳あたりからその慣例はなくなっていったのですが、その日は久しぶりに従兄弟の家に遊びにきていました。 

慎一は末っ子で、上に二人の姉がおりました。上の姉の宏美は僕らより6つ、下の姉の恵美(めぐみ:仮称)は4つ上でした。 

夏の終わりのよく晴れた日で、伯父さんと叔母ちゃんはお友達とカラオケに、宏美ちゃんは仕事に、慎一はちょっとバイク走らせてくると言って出掛けており、家には僕と恵美ちゃんしかいませんでした。 

僕はいい天気だったので、外に出て庭先に止めてあった原付に座ってマンガを読んでおりました。ふと、人の気配を感じて振り向くと、恵美ちゃんは家の前に止めてある自分の車の屋根に寝そべってヨガみたいなことをし始めました。 

口に出した事はありませんでしたが、僕は昔から恵美ちゃんに対して憧れに似た感情を抱いておりました。 

小さい頃から宏美ちゃんは僕の事を可愛がってくれましたが、それとは対照的に恵美ちゃんには何をしても冷たくあしらわれてきました。恵美ちゃんは愛想が無いという訳ではないけれど決して周りに迎合しない感じの人でした。そう言う性格もあってか休日でも家にいる事が多かったのですが、スタイルは良く、どう見ても美人でした。そんな次女を叔母ちゃんは「彼氏を連れてきた事がない」としばしば心配しておりましたが、本人は一向に意に介さない様子でした。 

僕はヨガをしている恵美ちゃんにしばし見惚れておりました。 
恵美ちゃんは緑のワンピースに白いカーディガンを羽織っていました。 
てか、なんであんなとこでヨガするんだろ?って思っていました。なぜ車の屋根の上?と。そんな僕の視線に気づかず、恵美ちゃんは真剣に仰向けの姿勢で上げた手をフーッと息を吐きながら胸の前まで下ろし、今度は状態をひねって手を伸ばし、たところでバランスをくずして「キャッ」と車から落ちました。 
僕が「大丈夫?」と笑うと恥ずかしそうに「見てんじゃねーよバーカ」と言って家の中に入っていきました。 

僕がしばらくマンガを読んでいると近所の小学生くらいの女の子がやってきて、「ねぇ、恵美お姉ちゃんてスタイルだけはいいのにね」と家の屋根を指差しました。振り返って屋根を見ると、いつの間にか恵美ちゃんが屋根の上でマンガを読んでいました。若い年頃の娘が屋根の上でマンガです。僕は女の子に「だけはね」と言って笑うと、「お前、あんまり余計な事言うと親戚の縁切るからね」と言ってきました。「よく聞こえたなぁ」って思いました。 

しばらくしてマンガの世界に没頭していると、急に視界が暗くなり「ちょっと、なに勝手に人の本読んでんの?」という声と共に視界の上に恵美ちゃんの綺麗な足が現れました。僕はその問いには応えずに、恵美ちゃんのワンピースの裾から伸びる綺麗な足と、その足を狙って飛んでいる蚊をぼんやり眺めていました。 

「ちょっと、蚊がいるから動かないで」 

と言って恵美ちゃんの足を眺めていました。 

「わ、ホントだ、とって」 

ワンピースの裾が地面に影を落として揺れてました。 

「とまったらすぐ叩くからじっとしてて」 

フワフワと飛んでいた蚊が恵美ちゃんの足に吸い寄せられた瞬間、二足歩行でやってきた小さなアライグマがその蚊を食べてしまいました。 

「え?何この子?可愛い!今食べたよね?蚊を食べちゃったよね?」 

という夢を見ました(笑) 

さっき寝ぼけ眼で、この見てた夢を思い返しながら、 
「あれ?そう言えば恵美ちゃんて今どうしてるんだっけ?」 
って考え続けてました。 

慎一には小学一年生の息子と、ウチの息子と同い年の女の子がいます。 
宏美ちゃんには来年小学生の娘がいます。 
伯父さんも叔母ちゃんも元気で、こないだも孫達を連れてウチの実家に遊びにきてたし。

あれ?恵美(仮称)は? 

しばらくして、目が覚めてきて、だんだんジワジワと区別がついてきました。 

前にも同じような事書いたけど(http://mixi.jp/view_diary.pl?id=924674957&owner_id=1895224) 
恵美ちゃんとは夢の中でばっかり逢えるのかもしれません。 
3歳の時に病気で亡くなっているので。 

だから、僕や慎一は恵美ちゃんとは逢った事もないんです。 
顔もはっきり思い出せるんだけどなぁ。 

まぁ、まだきっと、半分寝ぼけてるんだと思います(笑) 
でも夢の中では僕の中の憧れの女性の一人として存在しているみたいです。