コスモス街道

先程、家からとある駅に向かう車中の事。 

僕は「コスモス街道」と名付けられた舗装されて間もない道を走っておりました。その道の両脇には、その名の通り、黄緑の綿の上にピンクや白の粒を載せたようなコスモスが晩秋の昼下がりに咲き薫っておりました。 
綺麗に舗装されたわりに車の通りは少なく、のどかな田園が一面に広がるあたりを過ぎて、新興住宅地に入ったくらいのところ… 

道路の先、200mくらい先の路肩に2人の小さな人影がありました。近付くにつれてそれが小さな子供だとわかりました。 
一人の少し大きめの子の後をもう一人の子がついて歩き、2人で緩やかな上り坂を進んでいました。見たところ前を行く子は3~4歳くらいの男の子、後ろはやっと2歳になるくらいの女の子。男の子は柔らかそうな黒髪を、女の子は少し天然にウェーブさせた栗色の髪を、それぞれ道端のコスモスと一緒に風に踊らせながら、一目で兄妹とわかるような同じ弾みかたで歩いていました。 

歩道と車道の間には白い柵が設けられておりましたのでそれほど注意しないまでも、僕は速度を押さえてその2人の脇を通過しようと進みました。近くにパパかママがいるんだろうとは思うけど、まだ幼い兄妹が連れだって道を進む光景はそれはそれは愛らしくも頼もしいものでした。 

と、ちょうど僕が通り過ぎる時、 

お兄ちゃんが後ろの妹を振り返りました。 

妹は両手を高く掲げてお兄ちゃんに駆け寄りました。 

お兄ちゃんは前を向いてしゃがむと両手を後ろに広げました。 

妹はお兄ちゃんの首に両腕を巻き付けるように飛び乗り、ぎこちなく両足を目一杯広げました。 

少しよろめきながらも妹の伸びた足をしっかり抱えたお兄ちゃんは、立ち上がってまた歩き始めました。 

バックミラーから見た兄妹は嬉しそうでした。 
コスモスと同じくらいの背丈になった妹のウェーブした髪が弾けるように踊ってました。